
今週の「GⅠ見どころ解説」は、1985年に
ミホシンザンで
皐月賞を制した柴田政人氏(76)が、自身の経験を踏まえながらクラシック1冠目を分析した。中山芝2000メートルは高い操縦性が要求されるコースと指摘し、同じ舞台で行われた昨年末の
ホープフルSを快勝した
クロワデュノールに注目。コンビを組み続ける北村友騎手の手綱さばきにも期待した。
◇
桜花賞に続き、今週もクラシックの
皐月賞が行われる。俗に「最も速い馬が勝つ」と言われてきたレースだが、単にスピードがあるだけではなく、操縦性も重要な要素だ。
舞台となる中山芝2000メートルはスタートしてから1コーナーに入るまでのポジション争いが非常に激しく、逆に向こう正面に入るとグッとペースが落ち着く傾向にある。緩急のある流れでも折り合いを欠かないことが大事だ。
このコースでの勝ち方を知り尽くしていると感じるのが
武豊騎手。
皐月賞3勝(1993年
ナリタタイシン、2000年
エアシャカール、05年ディープインパクト)は、いずれも流れの忙しい前半は後方でジッと構えて3コーナーから進出していくような競馬だった。今年は騎乗がないのは残念だ。
メンバーを見渡すと、やはりデビューから3連勝で
ホープフルSを制した
クロワデュノールに目が行く。すでにこの舞台で結果を出しているので、トライアルを使わずに本番に直行するのも納得。前に行けるし、抑えてもいい脚が使えるのは強みだ。
私は1985年に同じ3戦無敗の
ミホシンザンでこのレースに臨んで5馬身差の快勝を飾った。デビューからずっと手綱を取って競馬を教え込んできたので、どんなレースでもできるという自信を持って臨むことができた。きっと、北村友騎手も同じような心境でいることだろう。
逆転候補の筆頭には
ヴィンセンシオを挙げたい。
弥生賞ディープインパクト記念は
ファウストラーゼンのまくりに屈したが、ゴール前でクビ差まで詰め寄った末脚は目立った。やや前に行きすぎていたきらいもあり、控えればもっといい脚を使えそうな気がする。無敗の
エリキング、
共同通信杯の勝ち方が良かった
マスカレードボール、大崩れのない
ジョバンニも有力とみる。
今年の有力馬はレースぶりに自在性がある馬が多いだけに、ジョッキーにとっても腕が鳴るところだろう。当日の馬場状態や流れを読んで、どこから仕掛けていくのか。鞍上の駆け引きにも注目しながら、熱戦を見守ってほしい。
■柴田政人(しばた・まさと) 1948(昭和23)年8月19日生まれ、76歳。青森県出身。岡部幸雄、福永洋一氏らと同期で67年3月に騎手デビューし、95年2月の引退までに中央競馬通算1767勝、重賞89勝。
ウイニングチケットで制した93年
日本ダービーなど数々の大レースで優勝した。調教師に転身して96年に厩舎を開業し、2019年の定年までに通算191勝。サンケイスポーツで調教師時代から重賞観戦記『柴田政人の目』を連載中。