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伊吹雅也のPOG分析室 (2020) ~第2回 2019ワールド上位者分析~
日本ダービーが施行された先週5月31日(日)をもって、通算7シーズン目の「ウマニティPOG 2019」が終了。各ワールドの最終順位が確定しました。既に通算8シーズン目となる「ウマニティPOG 2020」の第1回入札が始まっているところではあるものの、今回は前シーズンの優勝争いを振り返ってみたいと思います。エピファネイアやキズナといった新種牡馬の健闘が目立ったり、ノーザンファームの生産馬が年明け以降のG1をひとつも勝てなかったりと、例年とは異なる展開に戸惑ったプレイヤーも多いはず。そんな中で激戦を制したのは、どのような指名をしたプレイヤーだったのでしょうか。後日公開予定の優勝者コメントと合わせてお楽しみください。
1頭1オーナー制のスペシャルワールドで優勝を果たしたのは中(ナカ)さん。総獲得賞金は7億2558万円です。
注目していただきたいのは指名馬のラインナップ。普通に考えると「世代の頂点に君臨したコントレイルやデアリングタクトを一本釣りしての完全勝利」「サリオスやレシステンシアといったノーザンファーム生産の2歳G1ウイナーを指名してそのまま逃げ切り」みたいな勝ち方を想像してしまいますが、中(ナカ)さんはそのどちらにも該当していません。期間中にG1を勝った指名馬は、5月10日(日)のNHKマイルカップ(3歳G1・東京芝1600m)を制したラウダシオン(アンティフォナの2017)のみ。その他の19頭は重賞すら勝っておらず、オープンクラスのレースで優勝を果たしたのも、9月28日(土)のカンナステークス(2歳オープン・中山芝1200m外)で1着となったアルムブラスト(ヴァンフレーシュの2017)のみでした。そもそも、ラウダシオンもNHKマイルカップ以外の重賞では全敗に終わった馬。「重賞1勝で優勝」というのは、おそらく空前絶後の偉業だと思います。
異例の勝利が成立した最大の要因は勝ち馬率の高さ。指名馬20頭のうち17頭が勝ち上がりを果たすというのは、狙ってもそうそう達成できない驚異的な数字です。なお、中(ナカ)さんの指名馬は最終週に1勝クラスのレースを2つ勝つなどして2086万円を獲得したのですが、2位の平出貴昭さんとは最終的に381万円差だったので、この上積みがなければ逆転されていました。手駒の豊富さが最後の最後に効いた形と言って良いでしょう。
余談ながら、私も昔から勝ち馬率を重視して指名候補を選ぶタイプ。参加者や指名される馬の数が多い「ウマニティPOG」はともかく、一般的な人数ならびにルールのPOGだと、1~2勝馬の稼いだポイントが最終的な順位に影響してくるケースも少なくありません。一般的なPOGも楽しんでいる方は、中(ナカ)さんの指名をしっかり研究してみてください。私も、このスタイルで結果を残した尊敬すべき存在として、さまざまな部分を見習っていこうと思います(笑)。
先述の通り、スペシャルワールドで2位に食い込んだのは平出貴昭さん。わずかな差で優勝を逃したとはいえ、コントレイル(ロードクロサイトの2017)が5月31日(日)の日本ダービー(3歳G1・東京芝2400m)を制しました。昨春の時点では注目度がそれほど高くなかったこの馬を第1回の入札で獲得しているわけですから、ご本人としても会心の結果だったはず。さまざまなメディアを舞台にご活躍されている血統のスペシャリストで、血統というファクターそのものの魅力や威力を改めて示した結果と言えそうです。
3位はサリオス(サロミナの2017)らを指名したたけぼう54さん。前評判が高かったサリオスの入札に勝った点はもちろん、外国産馬のダーリントンホール(Miss Kentonの2017)を第4回入札で獲得するなど、相馬眼だけでなく指名戦略も素晴らしかったと思います。今シーズンの入札にもぜひ注目してみてください。
G1ワールドはコントレイルやサリオスを指名していた岡村信将さんと横断歩道さんのマッチレースとなり、最終的に1613万円差で岡村信将さんが優勝を果たしました。
岡村信将さんはプロ予想MAXや各種メディアを舞台にご活躍中で、本来ならば“著名人枠”として最初からスペシャルワールドにご参戦いただくべき存在なのですが、ご本人の希望で一般ユーザーと同じくオープンワールドからキャリアをスタート。初参戦となった「ウマニティPOG 2016」から4年連続で昇級を果たし、最短の期間でスペシャルワールドへの参戦権を獲得しています。私にとっては競馬評論家の大先輩であり、その実力は重々承知していたものの、まさかここまで凄まじい成績を収めてくるとは……。本当に、もう素晴らしいとしか言い様がありません。
以前に当連載でも触れましたが、岡村信将さんはデビュー済みの馬だけを指名していくスタイルです。予想理論「ラップギア」を駆使し、新馬や2戦目のパフォーマンスから各馬の将来性を予測していらっしゃいます。簡単に真似できる芸当ではありませんが、このスタイルでもここまで圧倒できることを証明したわけで、多くのプレイヤーに進むべき道を示した快進撃と言えるんじゃないでしょうか。
そんな岡村さんが1頭1オーナー制のスペシャルワールドでどう立ち回るのかは、新シーズン「ウマニティPOG 2020」における最大の見どころ。デビュー戦後に指名するスタイルを貫く場合、仮想オーナー枠の開放があったこれまでと違って、大半の評判馬が指名不可となっている状態から手駒を揃えていかなければなりません。圧倒的に不利な立場ではあるものの、岡村さんの実力をもってすればまた想像を超えてきそうな気もしますし、結果やその過程を興味深く見守っていきたいと思います。
G2ワールドを制したのはファットラビットさん。G1ウイナーこそ指名していなかったものの、20頭中19頭が勝ちあがりを果たしたうえ、11頭が2勝以上をマークしました。コントレイルやサリオスを獲得したプレイヤーがランキング上位の大半を占める中、2位以下を大きく引き離しての圧勝。スペシャルワールドの中(ナカ)さんと同じく、層の厚さがモノを言った形です。
G3ワールドはコントレイルを指名したプレイヤーが優勝争いを繰り広げる展開。最終的にはサリオスやデアリングタクトも獲得していたマカさんが制しています。ちなみに、マカさんがコントレイルやデアリングタクトを獲得したのは、いずれも2勝目をマークした後。長期間に渡る巧みな指名戦略が最大の勝因と言って良いでしょう。
オープンワールドは11億1433万円ものポイントを稼いだ亀の介さんが断然のトップ。デビュー後の入札で獲得したのは1頭だけで、指名馬10頭すべてが(獲得後に)1勝以上をマークしました。コントレイルとサリオスをそれぞれ第1回の入札で獲得している点もお見事です。
スタイルの違いこそあれ、どのワールドも上位に食い込んだのは素晴らしい相馬眼の持ち主ばかり。入札成績や指名馬全体の傾向も参考になると思いますし、ぜひひと通りチェックしてみてください。
■執筆者プロフィール
伊吹 雅也(いぶき・まさや)
埼玉県桶川市在住のフリーライター、競馬評論家。JRAホームページ内『今週の注目レース』で「データ分析」のコーナーを、TCKホームページ内『データ&コラム』で「分析レポート」を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラムなどさまざまなメディアを舞台に活動している。近著に『コース別 本当に儲かる血統大全 2019-2020』(ガイドワークス)、『ウルトラ回収率 2019-2020』(ガイドワークス)、『WIN5攻略全書 回収率150%超! "ミスターWIN5"のマインドセット』(ガイドワークス)、『コース別 本当に儲かる騎手大全2018秋~2019』(ガイドワークス)など。POG関連メディアの制作にもさまざまな形で携わっており、「ウマニティPOG 2014」では最高位クラスのスペシャルワールドにおいて優勝を果たした。