力強く突き上げた右手には、人さし指が1本立てられていた。まだ1冠目といわんばかりのパフォーマンス。
エフフォーリアを史上19頭目の無敗の
皐月賞馬に導き、初のGIタイトルを手に入れた横山武騎手は、全身で喜びをアピールした。
「最高のひと言です! きょうは人気にもなっていたし、プレッシャーはありましたが、自分の持っている技術をすべて出せば勝てると信じて乗りました」
スタートを決めて4番手を追走。前日の雨で芝は内が荒れていたが、この日の4Rでは内を通って逃げ切り、馬場状態を確認していた。「迷いましたけど、内の方がスムーズ(に抜け出せる)と判断しました」と勝負に出ると、先に抜けた
タイトルホルダーを早々とかわし、3馬身差をつける圧巻の内容だった。
これで4連勝。一戦ごとに相手は強くなるが、そのたびに2着馬との差を広げており、底知れない怪物ぶりを発揮している。「毎レース課題をクリアしてくれますし、もうひとつ上の舞台でも」と若き主戦の期待は膨らむばかりだ。
昨年は史上最年少で関東リーディングに輝いた5年目のホープ。父・典弘騎手が
セイウンスカイで
皐月賞を制した1998年に生まれ、その父の背中を追って騎手を目指した。その父からはレース前の15日に「緊張するか?」と聞かれたが、「アドバイスは特にありませんでした」と明かす。偉大な父に、まずはひとつ追いついた。
管理する鹿戸調教師は2008年の
ジャパンC(
スクリーンヒーロー)以来のGI2勝目。「最初から期待していた馬で、大事に使って予定通りに、順調にこられたのが大きい。並んでから抜け出すスピードは速いので、(最後は)安心して見ていました。抜けてからは間違いない、と思いましたね」と、余裕を持ってレースぶりを見ていたようだ。
次の目標は、もちろん2冠がかかるダービー。「2400メートルは初めてになるので折り合いは鍵ですが、きょうはお客さんの前でもどっしりしていました。この雰囲気で臨めれば」。意欲を燃やす鞍上は「武史、また頼むよ。これで満足されちゃ困るからな」と声をかけたトレーナーにも満面の笑みでこたえた。昨年の
コントレイルに続く無敗の3冠馬へ-。人馬ともに競馬界の未来を背負うニューヒーロー。その物語はまだ始まったばかりだ。(柴田章利)
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エフフォーリア 父
エピファネイア、母ケイティーズハート、母の父
ハーツクライ。鹿毛の牡3歳。美浦・
鹿戸雄一厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)キャロットファーム。戦績4戦4勝。獲得賞金1億9214万8000円。重賞は2021年GIII
共同通信杯に次いで2勝目。
皐月賞は
鹿戸雄一調教師、
横山武史騎手ともに初勝利。馬名は「強い幸福感(ギリシャ語)。母名より連想」。
■横山 武史(よこやま・たけし) 1998(平成10)年12月22日生まれ、22歳。茨城県出身。美浦・
鈴木伸尋厩舎所属。2017年デビュー。着実に勝ち星を伸ばして昨年はJRA94勝を挙げ史上最年少で関東リーディングに輝いた。18日現在、JRA通算2745戦222勝。重賞は21年
皐月賞(
エフフォーリア)のGI1勝を含む5勝。祖父は富雄元騎手、父は典弘騎手、兄に和生騎手がいる。
★
横山武史騎手…JRA・GIは11回目の挑戦で初勝利。父・
横山典弘騎手は1998年に
セイウンスカイで優勝しており、2年連続3組目の親子制覇。祖父・横山富雄元騎手も69年
天皇賞・秋、71年
天皇賞・春、73年
桜花賞、78年
オークスなどGI級レースを勝利しているため、祖父・父に続く親子3代のGI級レース制覇となった。
★
皐月賞年少制覇…
横山武史騎手は22歳3カ月28日での
皐月賞制覇となり、99年
テイエムオペラオーの
和田竜二騎手(21歳9カ月27日)に続く史上2番目に若い
皐月賞の勝利騎手。
★
鹿戸雄一調教師…JRA重賞は今年2勝目、通算9勝目。
★売り上げ大幅増…
皐月賞の売り上げは、191億7266万7100円で、前年比124・7%と大きく伸びた。昨年は無観客で開催したが今年は人数制限をしながらも有観客で行われ、入場人員は3005人だった。
★18日中山11R「
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