76年ぶりの無観客開催となった
日本ダービーが31日、東京競馬場で18頭によって争われ、福永騎乗で1番人気の
コントレイルが3馬身差で圧勝。2005年の父
ディープインパクト以来となる史上7頭目の無敗2冠を達成した。生産者の(株)ノースヒルズ・前田幸治代表は今秋、
菊花賞(10月25日、京都、GI、芝3000メートル)に向かうことを明言した。2着は2番人気の
サリオス、3着には10番人気の
ヴェルトライゼンデが入った。
◇
静寂のターフに、衝撃的な航跡を描いた。追いすがるライバルは誰もいない。
コントレイルが3馬身差の圧勝で、2005年の父
ディープインパクト以来となる無敗2冠制覇を飾った。
「きれいな横綱相撲でした。いや、本当に強いですね。ファンの方がいなかったのは残念でたまりませんが、馬をほめてやりたいと思います」
矢作調教師は、その圧勝劇を手放しでたたえた。好スタートから前半は3番手を追走。向こう正面で
マイラプソディが奇襲のまくりを仕掛けてもリズムを崩さずにスパートの好機を待ち、残り1ハロンで馬場の真ん中から堂々と先頭へ。外から追い上げてきた
サリオスを逆に突き放し、栄光のゴールへと飛び込んだ。
トレーナーにとってダービーは、2012年
ディープブリランテ以来の2勝目。当時は3番人気で追いかける立場だったが、今回は単勝1・4倍のプレッシャーが重くのしかかった。それでも「この緊張を楽しめるのは俺しかいない」と腹をくくって臨んだ。検量室前では殊勲の人馬を拍手で出迎え「疲れました。うれしいというより、肩の荷が下りました」と笑みを浮かべた。
世代の頂点までの道のりは、決して平坦ではなかった。生まれつきの球節の弱さを抱え、1歳暮れから半年間ほど全く乗り込めない時期があった。本格的な調教を開始してからはまだ1年しか経過していないだけに、「底が知れない。完成がいつとは言えない」と指揮官は無限の可能性を強調する。
秋は国内に専念し、
菊花賞(10月25日、京都、GI、芝3000メートル)で父と同じく無敗での3冠達成へ。父子3冠制覇となれば、日本競馬史上初の大偉業だ。未知の3000メートルにも「一回一回、ぼくの想像を超えてくる。(レースが)終わるごとに距離への自信が深まっていくし、きょうの折り合いをみても大丈夫でしょう」と矢作師に不安はない。
世代7262頭の頂点に立った
コントレイル。父
ディープインパクトの最高傑作として、来年は世界へと羽ばたくだろう。新型コロナ禍と戦う日本を明るく照らした“飛行機雲”は、どこまでも伸び続ける。(漆山貴禎)
■
コントレイル 父
ディープインパクト、母ロードクロサイト、母の父アンブライドルズソング。青鹿毛の牡3歳。栗東・
矢作芳人厩舎所属。北海道新冠町・(株)ノースヒルズの生産馬。馬主は前田晋二氏。戦績5戦5勝。獲得賞金4億7259万8000円。重賞は2019年GIII東スポ杯2歳S、GI
ホープフルS、20年GI
皐月賞に次いで4勝目。
日本ダービーは
矢作芳人調教師が12年
ディープブリランテに次いで2勝目、
福永祐一騎手は18年
ワグネリアンに次いで2勝目。馬名は「飛行機雲」。
★
ディープインパクト産駒…2018年(
ワグネリアン)、19年(
ロジャーバローズ)に続く3年連続勝利。通算6勝はトウルヌソル、サンデーサイレンスに並んで最多。
★同一種牡馬によるダービー3連覇…シアンモア(1933年カブトヤマ、34年フレーモア、35年ガヴアナー)、サンデーサイレンス(98年
スペシャルウィーク、99年
アドマイヤベガ、00年
アグネスフライト)に続く3回目。
★無敗のダービー馬…
コントレイルの父
ディープインパクトが05年に達成して以来15年ぶり11頭目。無敗で
皐月賞との2冠を達成した馬も
ディープインパクト以来で7頭目。
★払戻金…馬連(5)-(12)270円、ワイド(5)-(12)170円、馬単(5)→(12)350円(いずれも1番人気)はダービー史上の式別最低払戻金額。
★キャリア5戦目での勝利…17年(
レイデオロ)以来で5頭目。これは96年(
フサイチコンコルド)の3戦目に次ぐ2位タイ。
★売り上げ…
日本ダービーの売り上げは233億5390万2100円で、前年比92・3%となった。今年の平地GIは10レース目だったが、無観客競馬の影響もあって前年比減は
オークスに続いて8レース目となった。前年比増は
高松宮記念と
ヴィクトリアマイルの2レース。
★31日東京11R「ダービー」の着順&払戻金はこちら