世代の頂点を決める令和最初の日本ダービーが26日、東京競馬場で18頭によって争われ、浜中騎乗で12番人気のロジャーバローズが道中2番手追走から押し切ってV。2016年生まれのサラブレッド7071頭の頂点に立った。クビ差2着に3番人気のダノンキングリー、3着には2番人気のヴェロックスが入った。圧倒的1番人気に推された皐月賞馬サートゥルナーリアは直線で伸び切れず4着。無敗の2冠達成はならなかった。
府中に詰めかけた11万人をアッと言わせた。無敗の2冠馬誕生へ期待が高まるなか、令和初の日本ダービーを制したのはGI初挑戦で12番人気のロジャーバローズ。重賞未勝利馬としては1996年フサイチコンコルド以来の快挙に、浜中騎手が声を上ずらせた。
「僕自身が一番、びっくりしています。本当に実感がなくて、フワフワした気持ち。頭が真っ白ですが最高にうれしい」
好スタートを切り、道中は逃げるリオンリオンから距離を置いた2番手を追走。4コーナーで早めに仕掛け、残り300メートル付近で先頭に立つと、ムチを入れて追いまくった。外から迫るダノンキングリーとの一騎打ちをクビ差しのぎ、2015年のドゥラメンテの記録を0秒6更新する2分22秒6のレースレコードでゴールを駆け抜けた。
「『早くゴールが来い』と思っていた。“スローペースでヨーイドン”は分が悪い。後続に脚を使わせる展開になればと」。入線後、キングリーの戸崎騎手に「残っていますか?」とたずね、「残ってるよ」の返事で確信。ウイニングランを終えると、スタンド前で右手を突き上げて「やった!」と絶叫した。単勝9310円は1949年(タチカゼ)の5万5430円に次ぐ史上2番目の高額配当だった。
デビュー13年目、6度目の挑戦で手にした晴れ姿を見せたい人が、天国にいた。小学時代、地元・小倉の乗馬センターに応募をしてくれた祖父・飯田幸照さんだ。「競馬の道に導いてくれた、かけがえのない人。その時から『ダービー、ダービー(を勝ってくれ)』と言われてきました」。2016年11月20日、マイルCSをミッキーアイルで制したその日に他界。死に目にも会えなかった。少し遅かったが、やっと幼い日の“約束”を果たせた。
「見せてはあげられなかったけど、きょう勝って、祖父の夢をかなえられてうれしい」と大粒の涙がこぼれ落ちた。
角居調教師は、2007年のウオッカ以来となる2勝目も、僚馬サートゥルナーリアが1番人気で4着に敗れただけに笑顔はなし。「前回勝ったときは、訳が分からなかった。うれしいですが、1番人気の馬と勝った馬が違いますし…。複雑です」と言葉少なかった。
今後は休養に入るが、秋には登録済みの凱旋門賞挑戦も視野に入る。
「今後もダービージョッキーに恥じない騎乗をしたい」と誓う浜中騎手とともに、さらなる高みを目指す。 (渡部陽之助)
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◆浜中騎手がデビューから4年間厩舎に所属した“師匠”坂口正大元調教師 「うれしかったですね。関西テレビの(競馬中継)『競馬BEAT』に出演していて、涙が出て話ができませんでした。私が調教師定年の7、8年前に、たった一人だけとった弟子で、(2011年2月末の)私の定年後は苦労していたのも知っています。ゴールまであきらめずによく追ったし、本当によかった。おめでとう」
★入場&売り上げ
日本ダービーの売り上げは253億759万8300円で、前年比96・3%。今年の平地GIは10レースを終了したが、前年比売り上げ減は桜花賞、天皇賞・春、オークスに次いで4レース目。一方、入場者も11万7538人で前年比92・7%だった。
ロジャーバローズ 父ディープインパクト、母リトルブック、母の父リブレティスト。鹿毛の牡3歳。栗東・角居勝彦厩舎所属。北海道新ひだか町・飛野牧場の生産馬。馬主は猪熊広次氏。戦績6戦3勝。獲得賞金2億6875万6000円。重賞は初勝利。日本ダービーは角居勝彦調教師は2007年ウオッカに次いで2勝目、浜中俊騎手は初勝利。馬名は「人名より+冠名」。