NHKマイルCの追い切りが1日、茨城県・美浦トレーニングセンターで行われた。
桜花賞2着の
アスコリピチェーノ(美浦・
黒岩陽一厩舎、牝3歳)がウッドチップコースで抜群の加速力を披露し、サンスポ調教評価で最高の『S』を獲得。鞍上は落馬負傷から復帰するクリストフ・ルメール騎手(44)=栗・フリー=に決まり、この日に滋賀県・栗東トレーニングセンターで調教騎乗を再開した名手はカムバックへの意気込みを語った。復活を誓う人馬が、3歳マイル王へと突き進む。
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煙るような春の雨に打たれながら、視界に2つ目のGⅠタイトルをはっきりととらえた。昨年の最優秀2歳牝馬
アスコリピチェーノが、美浦Wコースで絶好の動きを披露。見届けた黒岩調教師は納得顔で切り出した。
「1週前にしっかりやって日曜日にも時計を出していたので、きょうはそこまで深くやることはないと思っていましたが、併せ馬でいい動きを見せてくれました」
シアブリス(未勝利)を追いかける形でスタート。直線で僚馬の内に潜り込むと、馬なりのままうなるような手応えで加速して併入した。雨の影響で全体的に時計を要す馬場でも6ハロン82秒2-11秒1の好タイム。4月25日にも同79秒4―11秒1の猛時計をたたき出しており、サンスポ調教評価は最上の『S』だ。
前走の
桜花賞は4コーナーで外に膨れた隙を突かれ、
阪神JFで下した
ステレンボッシュに逆転を許しての2着。デビューからの連勝は〝3〟でストップし、トレーナーは「いい結果が出なかったことは悔しい思いです」と唇をかんだ。
陣営が雪辱の舞台に選んだのは、牝馬同士の
オークスではなく、牡馬を交えての3歳マイル王決定戦。指揮官は「マイルでのパフォーマンスも良かったですし、2400メートルだと(未知のことに)挑戦する割合が多くなってしまう」と実績を残す距離に狙いを絞った。
復権を誓う大一番。未定だった鞍上は、レース当日に落馬負傷から復帰するルメール騎手に決まった。昨年6月に東京でデビュー戦を快勝して以来のコンビ再結成だ。
「ルメールさんに乗ってもらうにしても馬の状態が整ってこそ。しっかりここまでは整えることができましたので、力を出し切ってくれれば、強い走りをお見せできるんじゃないかと思います」
黒岩師は力強く決意を語った。GⅠシーズンに不意の戦線離脱を余儀なくされた名手と初黒星を喫してしまった女王が、雌伏のときを経て逆襲に打って出る。(山口遥暉)
■「体の動きも良かった」
3月30日の
ドバイターフで落馬負傷したクリストフ・ルメール騎手(44)=栗・フリー=が1日、栗東トレセンで調教騎乗を再開した。すでに5日からの実戦復帰は発表済みで、この日、
NHKマイルCで
アスコリピチェーノに騎乗することも明らかになった。
2頭の調教に騎乗して「乗ることができてうれしい。体の動きも良かった。安心しました」と笑み。落馬で鎖骨、肋骨を骨折し、肺に穴(気胸)も見つかって飛行機に乗れず、ドバイに2週間滞在。4月15日に帰国の途に就き、国内でリハビリに励んでいた。同25日にイベントに登場したときには、回復具合を「60%くらい」と話していた。「たくさん応援メッセージをくださって、うれしかった。モチベーションが上がりました」とファンに感謝していた。